名古屋・岐阜のコピーライター小澤です。
世間を見渡せば、著名かつ大規模な企業から中小零細企業まで存在します。経済産業省のデータによれば、日本に存在する企業のうち99.7%が中小企業であると言います。
同時に東京商工リサーチがまとめたデータによれば、2016年度の全国企業倒産件数(負債額1000万円以上)は8381件なのだそう。データだけ見れば、実感のわかない「倒産」という二文字。しかし、現実は凄まじい地獄が待っているようです。
実は今回、何気なく参加したあいち産業振興機構主催のセミナー。そこで講演された浅野撚糸株式会社 代表取締役社長浅野雅己氏のお話を聞いて、「倒産の恐怖」「起死回生への半端ない努力」を肌で感じることができました。
「倒産寸前!地獄を宝に変えた奇跡の企業」
そんな講演タイトルに興味を引かれて参加したのですが、講演の内容というのが想像を遙かに超えたものでした。講演内容の前に、まず講演者である浅野雅己氏の浅野撚糸株式会社について解説が必要でしょう。
浅野撚糸株式会社とは、岐阜にて撚糸業を営む社員15名の町工場です。1990年代には、最先端の機器と技術で大手商社やメーカーから大量受注し、栄華を極めたと言います。
しかし、2000年代に入ると中国からの安価な製品に押され、受注が激減。「このままでは、3年で倒産」と告げられる状態となり、当時30人いた社員の大半を解雇し10人へ。さらに20軒を超える下請けさんも、10軒に縮小へ。このときの決断は、身を切るような思いだったと浅野社長は語ります。
しかし、それは地獄への序章にすぎませんでした。なぜなら、規模を縮小したとしても、そもそも受注量が激減している状態。「月末の売上が厳しい」「(下請けさんから)電気代が払えない」などの日々が続き、夜に寝ることが怖くて仕方がなかったと言います。
起死回生を願い、自社製品の開発へ。
いつ倒産してもおかしくない、地獄の状態が7年間も続いたと言います。このまま下請けでは埒が明かないということで、自社製品の開発に着手した浅野社長。「中国という怪物につぶされないためには、オンリーワン技術を見出すしかない」。
強い意志の元に開発を進めますが、そう簡単には進むものではありません。ゴム、わら、紙、鉄…、あらゆる素材を撚り合わせ新しい糸を生み出そうとしましたが、すべて不発。あきらめかけていたときに出会ったのがクラレ社の「水に溶ける糸」でした。その水溶性糸と綿糸や毛糸などを組み合わせ、つぎからつぎへと試作品を開発したそうです。
年間500点を超える試験を繰り返し、開発から4年目の2005年。とあるタオルの製造会社との出会いをきっかけに、つぎのフェイズへと移ります。水溶性糸を使い、新しいタオルがつくれないか。タオル会社の協力のもと、4000枚にも上る試作品をつくりつづけること2年後。
なんと「驚異的な吸水性」という優れた性能を持つタオルが誕生することになったのです。さて、読者のみなさん。自社の新製品ができたから、もう安心だと思っていませんか。残念ながら、まだ地獄の日々は続くのです。
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