工務店・建築業専門のコピーライター小澤です。
2019年2月に、新建新聞社の工務店向けの講座に参加してきました。今回の講座のテーマは、「工務店のための顧客育成講座」。登壇したのは、兵庫県の工務店「株式会社 山弘」さんと、滋賀県の工務店「内保製材 株式会社」さんの2社の広報担当の方々です。顧客育成に向けた工務店の活動がとても参考になったので、ここでシェアしようと思います。
山弘さんの広報活動とは
昭和33年に創業した「株式会社 山弘」さんは、兵庫県内を商圏とする社員数46名規模の工務店です。県内に3つのモデルハウスを所有し、地元材を90%以上使用した「しそう杉の家」が売りとなっています。
2018年には、提案型住宅「ハリマチヤ」が、グッドデザイン賞及びジャパンウッドデザイン賞を受賞、洲本市・K様邸が日本エコハウス大賞の優秀賞を受賞するといった品質・デザイン性に優れた家を提供しています。「株式会社 山弘」さんの広動活動およびツールとしては、以下の通りです。
- Facebook…社風・企業スタンスが伝わるものを発信。だから、記事掲載は何でもあり。
- Instagram…デザイン・家の雰囲気を伝えることが目的。だから、施工事例を掲載。
- ピンタレスト…ホームページへの流入が目的。掲載記事は、施工事例。
- 独自アプリ…最新情報の配信とイベントへの誘導が目的。掲載記事は、施工事例。
- Tik Tok…実験的に実施
- DM…優良顧客向けに郵送 イベントへの誘導が目的
- 暮らしの動画…ホームページ内で公開
- リーフレット…会社のイメージを伝えるツールとして活用
- 冊子…事例をまとめた冊子を作成
上記のSNSにおける投稿で意識していることは、「素人目線」「顧客目線」であることです。たとえばInstagramでは、地鎮祭や上棟などの投稿には反響がなかったとのこと。発信する場合、工務店が伝えたいこと、お客さんが取りたいことは違うことを意識することがポイントだと語っていました。
その他ポイントしては、媒体の特性を踏まえ、「伝える内容を変えること」も気を付けること。さらに「継続的な発信」が大切であると強調し、その理由としては「続けないことには、成功か失敗か判断がつかないから」と解説されていました。ちなみに成果が見えてきたのは、下記の数字を超えたあたりからだと解説していました。
・Facebook “いいね4,000” ・Instagram “フォロワー7,000”
なお山弘さんでは現在、チラシを止めてFacebookへ完全にシフトを変更したのだそうです。Facebookの更新は、昨年は毎日20時30分に実施。投稿で意識しているのは、親しみやすく短い文章とのこと。その結果、月に3組から4組ほどの相談予約が入っているという興味深い話がありました。またDMの活用については、以下の手順にて活用していました。
・リスト顧客に対して、コンセプトセミナーの受講を案内
↓↓↓
・山弘さんの狙いに添った見込み客がどうかをセグメント
↓↓↓
・見込み客に対して、月2回イベントを開催。
魅力的なDMにて告知する。
↓↓↓
・来場した優良見込み客に対して商談をかける。
こうしてみると闇雲にリスト顧客へとDMを郵送するのではなく、段階的に優良顧客を見極めてく手順の中で、DMを活用していることがわかります。
ホームページでの優れた工夫
通常、ホームページで紹介する施主様の事例。外観や内装の各写真、施主様の取材記事を掲載していると思います。山弘さんの場合、さらに一歩踏み込んだ内容にしていました。
●施主様の暮らし方を表現したタイトルをつけている。
例 ○○市在住 B様邸 「帰りキッチン」←タイトルあり
タイトルをつけることで、建築のコンセプトが明確になる。ホームページの訪問者に対して、興味喚起になる。さらにタイトルを見るだけで、「どんな住まいなの?」と見たくなります。
タイトル例
いつかは鉄馬<ハーレー>
さくら食堂
森のまなびや
アングラ―ハウス 等
●施工中の工程も、ホームページで公開している。
通常なら完成した物件を紹介するだけですが、山弘さんでは進行中の施工状況をアップしています。これにより更新頻度が高まり、閲覧者が多くなったと言います。これから建てようと考えている人にとって、「山弘さんで建てると、どのような住まいになるのか」は、関心の一つ。だから、こうして工程を掲載することで疑似体験できるメリットがあるのではないでしょうか。
●ホームページにて「暮らしの動画」を公開している。
各事例を画像だけでなく、動画としても紹介。そこでの暮らしがどのように展開されているのか。動画を見ることで、さらにイメージがふくらむようになっています。
山弘さんのホームページの良さは、単なる事例紹介ではなく、「ワクワク感」の提供にあるのは間違いありません。読み手が「この施工会社は、私たちにどんないい住まいを提案してくれるのだろう」と思ってもらえるつくりになっています。
その他ツールでイメージを醸成。
●完成した住まいは、冊子(事例集)を作成し配布。
建てたら終わりではなく、施工事例としてアピールしたいもの。山弘さんの場合、一軒の家づくりを、二世帯、実家横、建て替え、終の棲家といったテーマを決めて取材。出会いからプラン、工事経過、さらに現在の住まい状況まで掲載しています。注文住宅の醍醐味を伝えることに成功しています。
山弘さんの良い点は、単なる事例集に終わっていないところです。出会いから現在の住まい状況まで掲載することで、これら建てる人がイメージしやすくなるだけでなく、建てたいテンションがあがります。
さて、いかがでしたでしょうか? 実はここでご紹介したのは、山弘さんの広報活動のごく一部ですが、どれも参考になる有益な情報です。ぜひ参考にして、よりよい広報活動にお役立てください。